製材業とCSR
みなさんがイメージする製材業とはどのようなものでしょう?
のこぎりで材木を切り、全てを同じサイズに加工して製品にする…単純に言えばそれだけの事かもしれません。
ところが、その単純と思われる作業の中に、地域の未来を切り開く可能性が秘められているとしたら、製材業への見方が少し変わって来ると思いませんか?
村上地域の林業の現実
私たち田村製材所のある新潟県村上地域には、豊かな自然が残っています。
村上市の総面積およそ11万7千ヘクタールの面積のうち、約85%が森林となっています。
特に北部は林業が盛んで杉の植林地が多く、新潟県内の杉材出荷では村上市産材が1/3程度を占めて、シェアNO.1となっています。
しかし、近年では担い手不足に加えて不安定な外国産材の流入、資材の高騰、住宅需要の変化などで林業界は一層苦しい状況に置かれています。
今、なぜ林業が必要なのか
海外から安い木材が入ってくるならそれを買えば良いのではないか?
合理的に考えると間違っていないように思えましたが、近年、木材輸入では諸外国に買い負ける状況となっています。その影響で価格が高騰したのがウッドショックです。
ウッドショックは2021年からの海外の需要増加と、コロナ禍によるコンテナ船不足に伴って日本への木材関連品の輸入が激減し、国内の供給が逼迫、価格が軒並み高騰したもので、現在でもその傾向は続いています。
当社では地域産材の取り扱いがメインとなるので、原木の仕入れに致命的な影響が出ることなく乗り越えてきていますが、外材の扱いが大きい製材会社では、納期の大幅な遅れが生じて納品ができずに大きな打撃を受けることとなりました。
川上と川下をつなぐ役目
地域で育った森の木をその地域で使う…
農作物ならば簡単にできそうなことも、材木となると途端にハードルが上がるのはなぜか?
それは、長い時間をかけて育てた木材の流通過程には川上から川下への流れがあり、各々が専業化しており、同時にどこも担い手不足が常態化しているからです。
川上とは山に入って林を管理して適切に伐り出す林業家、川下とは木材の販売先である建築業者などであり、私たち製材業者は川中に位置します。
林業は未来志向
林業では、時としてとても長いスパンで物事を考えなくてはいけません。
春に植えたものがその年の秋に収穫できるわけでは無いからです。
スギの木が最適な伐採時期を迎えるには、植林から60〜70年程度が必要です。今、私たちが製材している原木も、昭和中期に植えられたものが多いのです。
自分が植えた苗が育つまで待ち、自分で加工して利用するには、人間の寿命は少し短いかもしれません。ちょっと残念な気もしますが、未来の誰かのためを思い描きながら地域に森林を残す…そんな考え方って夢があると思いませんか?
実際に、私たちはそうして育てられた木を使わせてもらっているのです。
豊かな森・豊かな海
森林には本来、木材の供給のみならず、二酸化炭素の固定・水源かん養・生物多様性保全・土壌保護など、環境のための多くの機能が備わっています。
これらの機能を発揮させながら材木を利用するには、人の手による管理が重要です。計画的な伐採と植林によって、森林が担う機能を損なわせることなく材木を利用していきます。
植林地である山の自然環境を守ることは、海を守ることでもあります。有機物が豊富な山の土壌で作られたミネラルは雨によって川から海へと運ばれ、貝類や動物性プランクトンの餌となり、やがて小魚から大型魚へと食物連鎖を経て海を豊かにします。
林業界の振興により、森林の環境保全機能がフルに発揮されることが望まれています。